アミド・ヘルメット[2008]
ヨネダマキ コラボレーション企画「Scent of Shadow-かぐわしいかげ-」参加作品
(パリコレ2009春夏コレクションに出展)
奥行のあるかげ
沈んだ夕日にシルエットで浮かびあがった山々を見ているとき、わたしにはその山々自体が物体としてではなく影のように感じられる。物体と影との転移。この影(=物体)は奥行を持っている。奥行のあるかげ、暗闇の中のかげ、かげの中のかげ。このような弱くもあり強くもあるもの、
そういったものをわたしは“香しいかげ”と感じる。

そこで、強固な殻を想起させるヘルメットというかたちを、やわらかな素材でつくることを試みた。

かぶる人の視線、
かぶった姿を外からみる視線、
その両方の視点から、位相の異なった奥行きを考えたい。(大成優子)
「Scent of Shadow-かぐわしいかげ-」
ヨネダマキ×5人の建築家
(井上信次郎、大成優子、月岡和美、水野清香、渡辺賢)

帽子が「様になるか否か」は、帽子と被り手のスタイル・個性とシルエットとの調和にある。例えるならば木と鉢、絵と額縁の関係のように 顔型・髪型が既に滲ませる1つの世界の上におく形とその影の美しさが秘められていると思う。季節や土地柄といった環境と人間のしくみで「生活様式」があり、その中で培われる価値観や世界感を「個性」が語る。それらをまとめたものを私は建築に垣間見る。しかも 線とボリュームのバランスで作られた立体や そこから出される光と影の美を追求するところは、帽子も建築も少しも変わることは無いようだ。よって、上記を日々考えている彼らが理想とする帽子を一緒に創作したいと思いつきこの機会に至った。そしてここでは敢えて日頃問題にしている光ではなく影・陰。しかも、かぐわしいかげを人間の頭から照らすとしたら?をイメージして一緒に表現することでゆたかさへ繋がる新たな見方や広がりができていたらと思っている。(ヨネダマキ)

主要用途:帽子
デザイン:大成優子+ヨネダマキ(帽子デザイナー)
リリース:2008年8月27日
主材料:網戸ネット(ポリエステル)
室内側が黒、屋外側が銀色の加工がされているものを用いた。網戸は、室内側が黒いと中からスッキリと屋外を見ることができ、屋外側が銀色であると太陽光線を乱反射するため、外から室内が見えにくい。室内からは視線を妨げない様にひっそりとしている弱い存在であるが、一方で、屋外に使用されるため、雨や太陽にも耐えうる強さをもつ素材である。このヘルメットでは、網戸とは逆に黒い面を外観側として多用している。